民事再生法

第二章 再生手続の開始

第一節 再生手続開始の申立て

(再生手続開始の申立て)

第二十一条債務者に破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるときは、債務者は、裁判所に対し、再生手続開始の申立てをすることができる。債務者が事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないときも、同様とする。

前項前段に規定する場合には、債権者も、再生手続開始の申立てをすることができる。

(破産手続開始等の申立義務と再生手続開始の申立て)

第二十二条他の法律の規定により法人の理事又はこれに準ずる者がその法人に対して破産手続開始又は特別清算開始の申立てをしなければならない場合においても、再生手続開始の申立てをすることを妨げない。

(疎明)

第二十三条再生手続開始の申立てをするときは、再生手続開始の原因となる事実を疎明しなければならない。

債権者が、前項の申立てをするときは、その有する債権の存在をも疎明しなければならない。

(費用の予納)

第二十四条再生手続開始の申立てをするときは、申立人は、再生手続の費用として裁判所の定める金額を予納しなければならない。

費用の予納に関する決定に対しては、即時抗告をすることができる。

(意見の聴取)

第二十四条の二 裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合には、当該申立てを棄却すべきこと又は再生手続開始の決定をすべきことが明らかである場合を除き、当該申立てについての決定をする前に、労働組合等(再生債務者の使用人その他の従業者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、再生債務者の使用人その他の従業者の過半数で組織する労働組合がないときは再生債務者の使用人その他の従業者の過半数を代表する者をいう。第二百四十六条第三項を除き、以下同じ。)の意見を聴かなければならない。

(再生手続開始の条件)

第二十五条次の各号のいずれかに該当する場合には、裁判所は、再生手続開始の申立てを棄却しなければならない。

一 再生手続の費用の予納がないとき。

二 裁判所に破産手続又は特別清算手続が係属し、その手続によることが債権者の一般の利益に適合するとき。

三 再生計画案の作成若しくは可決の見込み又は再生計画の認可の見込みがないことが明らかであるとき。

四 不当な目的で再生手続開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき。

(他の手続の中止命令等)

第二十六条裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、再生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、次に掲げる手続の中止を命ずることができる。ただし、第二号に掲げる手続については、その手続の申立人である再生債権者に不当な損害を及ぼすおそれがない場合に限る。

一 再生債務者についての破産手続又は特別清算手続

二 再生債権に基づく強制執行、仮差押え若しくは仮処分又は再生債権を被担保債権とする留置権(商法(明治三十二年法律第四十八号)又は会社法の規定によるものを除く。)による競売(次条、第二十九条及び第三十九条において「再生債権に基づく強制執行等」という。)の手続で、再生債務者の財産に対して既にされているもの

三 再生債務者の財産関係の訴訟手続

四 再生債務者の財産関係の事件で行政庁に係属しているものの手続

裁判所は、前項の規定による中止の命令を変更し、又は取り消すことができる。

裁判所は、再生債務者の事業の継続のために特に必要があると認めるときは、再生債務者(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人)の申立てにより、担保を立てさせて、第一項第二号の規定により中止した手続の取消しを命ずることができる。

第一項の規定による中止の命令、第二項の規定による決定及び前項の規定による取消しの命令に対しては、即時抗告をすることができる。

前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。

第四項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。

(再生債権に基づく強制執行等の包括的禁止命令)

第二十七条裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、前条第一項の規定による中止の命令によっては再生手続の目的を十分に達成することができないおそれがあると認めるべき特別の事情があるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、再生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、すべての再生債権者に対し、再生債務者の財産に対する再生債権に基づく強制執行等の禁止を命ずることができる。ただし、事前に又は同時に、再生債務者の主要な財産に関し第三十条第一項の規定による保全処分をした場合又は第五十四条第一項の規定若しくは第七十九条第一項の規定による処分をした場合に限る。

前項の規定による禁止の命令(以下「包括的禁止命令」という。)が発せられた場合には、再生債務者の財産に対して既にされている再生債権に基づく強制執行等の手続は、再生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、中止する。

裁判所は、包括的禁止命令を変更し、又は取り消すことができる。

裁判所は、再生債務者の事業の継続のために特に必要があると認めるときは、再生債務者(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人)の申立てにより、担保を立てさせて、第二項の規定により中止した再生債権に基づく強制執行等の手続の取消しを命ずることができる。

包括的禁止命令、第三項の規定による決定及び前項の規定による取消しの命令に対しては、即時抗告をすることができる。

前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。

包括的禁止命令が発せられたときは、再生債権については、当該命令が効力を失った日の翌日から二月を経過する日までの間は、時効は、完成しない。

(包括的禁止命令に関する公告及び送達等)

第二十八条包括的禁止命令及びこれを変更し、又は取り消す旨の決定があった場合には、その旨を公告し、その裁判書を再生債務者(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人。次項において同じ。)及び申立人に送達し、かつ、その決定の主文を知れている再生債権者及び再生債務者(保全管理人が選任されている場合に限る。)に通知しなければならない。

包括的禁止命令及びこれを変更し、又は取り消す旨の決定は、再生債務者に対する裁判書の送達がされた時から、効力を生ずる。

前条第四項の規定による取消しの命令及び同条第五項の即時抗告についての裁判(包括的禁止命令を変更し、又は取り消す旨の決定を除く。)があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。

(包括的禁止命令の解除)

第二十九条裁判所は、包括的禁止命令を発した場合において、再生債権に基づく強制執行等の申立人である再生債権者に不当な損害を及ぼすおそれがあると認めるときは、当該再生債権者の申立てにより、当該再生債権者に対しては包括的禁止命令を解除する旨の決定をすることができる。この場合において、当該再生債権者は、再生債務者の財産に対する再生債権に基づく強制執行等をすることができ、包括的禁止命令が発せられる前に当該再生債権者がした再生債権に基づく強制執行等の手続は、続行する。

前項の規定による解除の決定を受けた者に対する第二十七条第七項の規定の適用については、同項中「当該命令が効力を失った日」とあるのは、「第二十九条第一項の規定による解除の決定があった日」とする。

第一項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。

第一項の申立てについての裁判及び第三項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。

(仮差押え、仮処分その他の保全処分)

第三十条裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合には、利害関係人の申立てにより又は職権で、再生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、再生債務者の業務及び財産に関し、仮差押え、仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができる。

裁判所は、前項の規定による保全処分を変更し、又は取り消すことができる。

第一項の規定による保全処分及び前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。

前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。

第三項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。

裁判所が第一項の規定により再生債務者が再生債権者に対して弁済その他の債務を消滅させる行為をすることを禁止する旨の保全処分を命じた場合には、再生債権者は、再生手続の関係においては、当該保全処分に反してされた弁済その他の債務を消滅させる行為の効力を主張することができない。ただし、再生債権者が、その行為の当時、当該保全処分がされたことを知っていたときに限る。

(担保権の実行手続の中止命令)

第三十一条裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、再生債権者の一般の利益に適合し、かつ、競売申立人に不当な損害を及ぼすおそれがないものと認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、相当の期間を定めて、第五十三条第一項に規定する再生債務者の財産につき存する担保権の実行手続の中止を命ずることができる。ただし、その担保権によって担保される債権が共益債権又は一般優先債権であるときは、この限りでない。

裁判所は、前項の規定による中止の命令を発する場合には、競売申立人の意見を聴かなければならない。

裁判所は、第一項の規定による中止の命令を変更し、又は取り消すことができる。

第一項の規定による中止の命令及び前項の規定による変更の決定に対しては、競売申立人に限り、即時抗告をすることができる。

前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。

第四項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。

(再生手続開始の申立ての取下げの制限)

第三十二条再生手続開始の申立てをした者は、再生手続開始の決定前に限り、当該申立てを取り下げることができる。この場合において、第二十六条第一項の規定による中止の命令、包括的禁止命令、第三十条第一項の規定による保全処分、前条第一項の規定による中止の命令、第五十四条第一項若しくは第七十九条第一項の規定による処分、第百三十四条の二第一項の規定による保全処分又は第百九十七条第一項の規定による中止の命令がされた後は、裁判所の許可を得なければならない。

第二節 再生手続開始の決定

(再生手続開始の決定)

第三十三条裁判所は、第二十一条に規定する要件を満たす再生手続開始の申立てがあったときは、第二十五条の規定によりこれを棄却する場合を除き、再生手続開始の決定をする。

前項の決定は、その決定の時から、効力を生ずる。

(再生手続開始と同時に定めるべき事項)

第三十四条裁判所は、再生手続開始の決定と同時に、再生債権の届出をすべき期間及び再生債権の調査をするための期間を定めなければならない。

前項の場合において、知れている再生債権者の数が千人以上であり、かつ、相当と認めるときは、裁判所は、次条第五項本文において準用する同条第三項第一号及び第三十七条本文の規定による知れている再生債権者に対する通知をせず、かつ、第百二条第一項に規定する届出再生債権者を債権者集会(再生計画案の決議をするためのものを除く。)の期日に呼び出さない旨の決定をすることができる。

(再生手続開始の公告等)

第三十五条裁判所は、再生手続開始の決定をしたときは、直ちに、次に掲げる事項を公告しなければならない。ただし、第百六十九条の二第一項に規定する社債管理者等がないときは、第三号に掲げる事項については、公告することを要しない。

一 再生手続開始の決定の主文

二 前条第一項の規定により定めた期間

三 再生債務者が発行した第百六十九条の二第一項に規定する社債等について同項に規定する社債管理会社等がある場合における当該社債等についての再生債権者の議決権は、同項各号のいずれかに該当する場合(同条第三項の場合を除く。)でなければ行使することができない旨

前条第二項の決定があったときは、裁判所は、前項各号に掲げる事項のほか、第五項本文において準用する次項第一号及び第三十七条本文の規定による知れている再生債権者に対する通知をせず、かつ、第百二条第一項に規定する届出再生債権者を債権者集会(再生計画案の決議をするためのものを除く。)の期日に呼び出さない旨をも公告しなければならない。

次に掲げる者には、前二項の規定により公告すべき事項を通知しなければならない。

一 再生債務者及び知れている再生債権者

二 第五十四条第一項、第六十四条第一項又は第七十九条第一項前段の規定による処分がされた場合における監督委員、管財人又は保全管理人

前項の規定にかかわらず、再生債務者がその財産をもって約定劣後再生債権(再生債権者と再生債務者との間において、再生手続開始前に、当該再生債務者について破産手続が開始されたとすれば当該破産手続におけるその配当の順位が破産法(平成十六年法律第七十五号)第九十九条第一項に規定する劣後的破産債権に後れる旨の合意がされた債権をいう。以下同じ。)に優先する債権に係る債務を完済することができない状態にあることが明らかであるときは、当該約定劣後再生債権を有する者であって知れているものに対しては、前項の規定による通知をすることを要しない。

第一項第二号、第三項第一号及び前項の規定は、前条第一項の規定により定めた再生債権の届出をすべき期間に変更を生じた場合について準用する。ただし、同条第二項の決定があったときは、知れている再生債権者に対しては、当該通知をすることを要しない。

(抗告)

第三十六条再生手続開始の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

第二十六条から第三十条までの規定は、再生手続開始の申立てを棄却する決定に対して前項の即時抗告があった場合について準用する。

(再生手続開始決定の取消し)

第三十七条再生手続開始の決定をした裁判所は、前条第一項の即時抗告があった場合において、当該決定を取り消す決定が確定したときは、直ちにその主文を公告し、かつ、第三十五条第三項各号に掲げる者(保全管理人及び同条第四項の規定により通知を受けなかった者を除く。)にその主文を通知しなければならない。ただし、第三十四条第二項の決定があったときは、知れている再生債権者に対しては、当該通知をすることを要しない。

(再生債務者の地位)

第三十八条再生債務者は、再生手続が開始された後も、その業務を遂行し、又はその財産(日本国内にあるかどうかを問わない。第六十六条及び第八十一条第一項において同じ。)を管理し、若しくは処分する権利を有する。

再生手続が開始された場合には、再生債務者は、債権者に対し、公平かつ誠実に、前項の権利を行使し、再生手続を追行する義務を負う。

前二項の規定は、第六十四条第一項の規定による処分がされた場合には、適用しない。

(他の手続の中止等)

第三十九条再生手続開始の決定があったときは、破産手続開始、再生手続開始若しくは特別清算開始の申立て、再生債務者の財産に対する再生債権に基づく強制執行等又は再生債権に基づく財産開示手続の申立てはすることができず、破産手続、再生債務者の財産に対して既にされている再生債権に基づく強制執行等の手続及び再生債権に基づく財産開示手続は中止し、特別清算手続はその効力を失う。

裁判所は、再生に支障を来さないと認めるときは、再生債務者等の申立てにより又は職権で、前項の規定により中止した再生債権に基づく強制執行等の手続の続行を命ずることができ、再生のため必要があると認めるときは、再生債務者等の申立てにより又は職権で、担保を立てさせて、又は立てさせないで、中止した再生債権に基づく強制執行等の手続の取消しを命ずることができる。

再生手続開始の決定があったときは、次に掲げる請求権は、共益債権とする。

一 第一項の規定により中止した破産手続における財団債権(破産法第百四十八条第一項第三号に掲げる請求権を除き、破産手続が開始されなかった場合における同法第五十五条第二項及び第百四十八条第四項に規定する請求権を含む。)

二 第一項の規定により効力を失った手続のために再生債務者に対して生じた債権及びその手続に関する再生債務者に対する費用請求権

三 前項の規定により続行された手続に関する再生債務者に対する費用請求権

再生手続開始の決定があったときは、再生手続が終了するまでの間(再生計画認可の決定が確定したときは、第百八十一条第二項に規定する再生計画で定められた弁済期間が満了する時(その期間の満了前に再生計画に基づく弁済が完了した場合又は再生計画が取り消された場合にあっては弁済が完了した時又は再生計画が取り消された時)までの間)は、罰金、科料及び追徴の時効は、進行しない。ただし、当該罰金、科料又は追徴に係る請求権が共益債権である場合は、この限りでない。

(訴訟手続の中断等)

第四十条再生手続開始の決定があったときは、再生債務者の財産関係の訴訟手続のうち再生債権に関するものは、中断する。

前項に規定する訴訟手続について、第百七条第一項、第百九条第二項(第百十三条第二項後段において準用する場合を含む。)又は第二百十三条第五項(第二百十九条第二項において準用する場合を含む。)の規定による受継があるまでに再生手続が終了したときは、再生債務者は、当然訴訟手続を受継する。

前二項の規定は、再生債務者の財産関係の事件のうち再生債権に関するものであって、再生手続開始当時行政庁に係属するものについて準用する。

(債権者代位訴訟等の取扱い)

第四十条の二 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四百二十三条若しくは第四百二十四条の規定により再生債権者の提起した訴訟又は破産法の規定による否認の訴訟若しくは否認の請求を認容する決定に対する異議の訴訟が再生手続開始当時係属するときは、その訴訟手続は、中断する。

再生債務者等は、前項の規定により中断した訴訟手続のうち、民法第四百二十三条の規定により再生債権者の提起した訴訟に係るものを受け継ぐことができる。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができる。

前項の場合においては、相手方の再生債権者に対する訴訟費用請求権は、共益債権とする。

第二項に規定する訴訟手続について同項の規定による受継があった後に再生手続が終了したときは、第六十八条第四項において準用する同条第二項の規定により中断している場合を除き、当該訴訟手続は中断する。

前項の場合には、再生債権者において当該訴訟手続を受け継がなければならない。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができる。

第二項に規定する訴訟手続が第六十八条第四項において準用する同条第二項の規定により中断した後に再生手続が終了した場合には、同条第四項において準用する同条第三項の規定にかかわらず、再生債権者において当該訴訟手続を受け継がなければならない。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができる。

第一項の規定により中断した訴訟手続について第二項又は第百四十条第一項の規定による受継があるまでに再生手続が終了したときは、再生債権者又は破産管財人は、当該訴訟手続を当然受継する。

(再生債務者等の行為の制限)

第四十一条裁判所は、再生手続開始後において、必要があると認めるときは、再生債務者等が次に掲げる行為をするには裁判所の許可を得なければならないものとすることができる。

一 財産の処分

二 財産の譲受け

三 借財

四 第四十九条第一項の規定による契約の解除

五 訴えの提起

六 和解又は仲裁合意(仲裁法(平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する仲裁合意をいう。)

七 権利の放棄

八 共益債権、一般優先債権又は第五十二条に規定する取戻権の承認

九 別除権の目的である財産の受戻し

十 その他裁判所の指定する行為

前項の許可を得ないでした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

(営業等の譲渡)

第四十二条再生手続開始後において、再生債務者等が再生債務者の営業又は事業の全部又は重要な一部の譲渡をするには、裁判所の許可を得なければならない。この場合において,裁判所は,当該再生債務者の事業の再生のために必要であると認める場合に限り,許可をすることができる。

裁判所は、前項の許可をする場合には、知れている再生債権者(再生債務者が再生手続開始の時においてその財産をもって約定劣後再生債権に優先する債権に係る債務を完済することができない状態にある場合における当該約定劣後再生債権を有する者を除く。)の意見を聴かなければならない。ただし、第百十七条第二項に規定する債権者委員会があるときは、その意見を聴けば足りる。

裁判所は、第一項の許可をする場合には、労働組合等の意見を聴かなければならない。

前条第二項の規定は、第一項の許可を得ないでした行為について準用する。

(事業の譲渡に関する株主総会の決議による承認に代わる許可)

第四十三条再生手続開始後において、株式会社である再生債務者がその財産をもって債務を完済することができないときは、裁判所は、再生債務者等の申立てにより、当該再生債務者の事業の全部の譲渡又は会社法第四百六十七条第一項第二号に規定する事業の重要な一部の譲渡について同項に規定する株主総会の決議による承認に代わる許可を与えることができる。ただし、当該事業の全部の譲渡又は事業の重要な一部の譲渡が事業の継続のために必要である場合に限る。

前項の許可(以下この条において「代替許可」という。)の決定があった場合には、その裁判書を再生債務者等に、その決定の要旨を記載した書面を株主に、それぞれ送達しなければならない。

代替許可の決定は、前項の規定による再生債務者等に対する送達がされた時から、効力を生ずる。

第二項の規定による株主に対する送達は、株主名簿に記載され、若しくは記録された住所又は株主が再生債務者に通知した場所にあてて、書類を通常の取扱いによる郵便に付し、又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第六項に規定する一般信書便事業者若しくは同条第九項に規定する特定信書便事業者の提供する同条第二項に規定する信書便の役務を利用して送付する方法によりすることができる。

前項の規定による送達をした場合には、その郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律第二条第三項に規定する信書便物(以下「郵便物等」という。)が通常到達すべきであった時に、送達があったものとみなす。

代替許可の決定に対しては、株主は、即時抗告をすることができる。

前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。

代替許可を得て第一項に規定する事業の全部の譲渡又は事業の重要な一部の譲渡をする場合には、会社法第四百六十九条及び第四百七十条の規定は、適用しない。

(開始後の権利取得)

第四十四条再生手続開始後、再生債権につき再生債務者財産に関して再生債務者(管財人が選任されている場合にあっては、管財人又は再生債務者)の行為によらないで権利を取得しても、再生債権者は、再生手続の関係においては、その効力を主張することができない。

再生手続開始の日に取得した権利は、再生手続開始後に取得したものと推定する。

(開始後の登記及び登録)

第四十五条不動産又は船舶に関し再生手続開始前に生じた登記原因に基づき再生手続開始後にされた登記又は不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第百五条第一号の規定による仮登記は、再生手続の関係においては、その効力を主張することができない。ただし、登記権利者が再生手続開始の事実を知らないでした登記又は仮登記については、この限りでない。

前項の規定は、権利の設定、移転若しくは変更に関する登録若しくは仮登録又は企業担保権の設定、移転若しくは変更に関する登記について準用する。

(開始後の手形の引受け等)

第四十六条為替手形の振出人又は裏書人である再生債務者について再生手続が開始された場合において、支払人又は予備支払人がその事実を知らないで引受け又は支払をしたときは、その支払人又は予備支払人は、これによって生じた債権につき、再生債権者としてその権利を行うことができる。

前項の規定は、小切手及び金銭その他の物又は有価証券の給付を目的とする有価証券について準用する。

(善意又は悪意の推定)

第四十七条前二条の規定の適用については、第三十五条第一項の規定による公告(以下「再生手続開始の公告」という。)前においてはその事実を知らなかったものと推定し、再生手続開始の公告後においてはその事実を知っていたものと推定する。

(共有関係)

第四十八条再生債務者が他人と共同して財産権を有する場合において、再生手続が開始されたときは、再生債務者等は、共有者の間で分割をしない定めがあるときでも、分割の請求をすることができる。

前項の場合には、他の共有者は、相当の償金を支払って再生債務者の持分を取得することができる。

(双務契約)

第四十九条双務契約について再生債務者及びその相手方が再生手続開始の時において共にまだその履行を完了していないときは、再生債務者等は、契約の解除をし、又は再生債務者の債務を履行して相手方の債務の履行を請求することができる。

前項の場合には、相手方は、再生債務者等に対し、相当の期間を定め、その期間内に契約の解除をするか又は債務の履行を請求するかを確答すべき旨を催告することができる。この場合において、再生債務者等がその期間内に確答をしないときは、同項の規定による解除権を放棄したものとみなす。

前二項の規定は、労働協約には、適用しない。

第一項の規定により再生債務者の債務の履行をする場合において、相手方が有する請求権は、共益債権とする。

破産法第五十四条の規定は、第一項の規定による契約の解除があった場合について準用する。この場合において、同条第一項中「破産債権者」とあるのは「再生債権者」と、同条第二項中「破産者」とあるのは「再生債務者」と、「破産財団」とあるのは「再生債務者財産」と、「財団債権者」とあるのは「共益債権者」と読み替えるものとする。

(継続的給付を目的とする双務契約)

第五十条再生債務者に対して継続的給付の義務を負う双務契約の相手方は、再生手続開始の申立て前の給付に係る再生債権について弁済がないことを理由としては、再生手続開始後は、その義務の履行を拒むことができない。

前項の双務契約の相手方が再生手続開始の申立て後再生手続開始前にした給付に係る請求権(一定期間ごとに債権額を算定すべき継続的給付については、申立ての日の属する期間内の給付に係る請求権を含む。)は、共益債権とする。

前二項の規定は、労働契約には、適用しない。

(双務契約についての破産法の準用)

第五十一条破産法第五十六条、第五十八条及び第五十九条の規定は、再生手続が開始された場合について準用する。この場合において、同法第五十六条第一項中「第五十三条第一項及び第二項」とあるのは「民事再生法第四十九条第一項及び第二項」と、「破産者」とあるのは「再生債務者」と、同条第二項中「財団債権」とあるのは「共益債権」と、同法第五十八条第一項中「破産手続開始」とあるのは「再生手続開始」と、同条第三項において準用する同法第五十四条第一項中「破産債権者」とあるのは「再生債権者」と、同法第五十九条第一項中「破産手続」とあるのは「再生手続」と、同条第二項中「請求権は、破産者が有するときは破産財団に属し」とあるのは「請求権は」と、「破産債権」とあるのは「再生債権」と読み替えるものとする。

(取戻権)

第五十二条再生手続の開始は、再生債務者に属しない財産を再生債務者から取り戻す権利に影響を及ぼさない。

破産法第六十三条及び第六十四条の規定は、再生手続が開始された場合について準用する。この場合において、同法第六十三条第一項中「破産手続開始の決定」とあるのは「再生手続開始の決定」と、同項ただし書及び同法第六十四条中「破産管財人」とあるのは「再生債務者(管財人が選任されている場合にあっては、管財人)」と、同法第六十三条第二項中「第五十三条第一項及び第二項」とあるのは「民事再生法第四十九条第一項及び第二項」と、同条第三項中「第一項」とあるのは「前二項」と、「同項」とあるのは「第一項」と、同法第六十四条第一項中「破産者」とあるのは「再生債務者」と、「破産手続開始」とあるのは「再生手続開始」と読み替えるものとする。

(別除権)

第五十三条再生手続開始の時において再生債務者の財産につき存する担保権(特別の先取特権、質権、抵当権又は商法若しくは会社法の規定による留置権をいう。第三項において同じ。)を有する者は、その目的である財産について、別除権を有する。

別除権は、再生手続によらないで、行使することができる。

担保権の目的である財産が再生債務者等による任意売却その他の事由により再生債務者財産に属しないこととなった場合において当該担保権がなお存続するときにおける当該担保権を有する者も、その目的である財産について別除権を有する。

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