民事再生法

第一章 総則

(目的)

第一条この法律は、経済的に窮境にある債務者について、その債権者の多数の同意を得、かつ、裁判所の認可を受けた再生計画を定めること等により、当該債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し、もって当該債務者の事業又は経済生活の再生を図ることを目的とする。

(定義)

第二条この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一 再生債務者 経済的に窮境にある債務者であって、その者について、再生手続開始の申立てがされ、再生手続開始の決定がされ、又は再生計画が遂行されているものをいう。

二 再生債務者等 管財人が選任されていない場合にあっては再生債務者、管財人が選任されている場合にあっては管財人をいう。

三 再生計画 再生債権者の権利の全部又は一部を変更する条項その他の第百五十四条に規定する条項を定めた計画をいう。

四 再生手続 次章以下に定めるところにより、再生計画を定める手続をいう。

(外国人の地位)

第三条外国人又は外国法人は、再生手続に関し、日本人又は日本法人と同一の地位を有する。

(再生事件の管轄)

第四条この法律の規定による再生手続開始の申立ては、債務者が個人である場合には日本国内に営業所、住所、居所又は財産を有するときに限り、法人その他の社団又は財団である場合には日本国内に営業所、事務所又は財産を有するときに限り、することができる。

民事訴訟法(平成八年法律第百九号)の規定により裁判上の請求をすることができる債権は、日本国内にあるものとみなす。

第五条再生事件は、再生債務者が、営業者であるときはその主たる営業所の所在地、営業者で外国に主たる営業所を有するものであるときは日本におけるその主たる営業所の所在地、営業者でないとき又は営業者であっても営業所を有しないときはその普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。

前項の規定による管轄裁判所がないときは、再生事件は、再生債務者の財産の所在地(債権については、裁判上の請求をすることができる地)を管轄する地方裁判所が管轄する。

前二項の規定にかかわらず、法人が株式会社の総株主の議決権(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式についての議決権を除き、会社法(平成十七年法律第八十六号)第八百七十九条第三項の規定により議決権を有するものとみなされる株式についての議決権を含む。次項、第五十九条第三項第二号及び第四項並びに第百二十七条の二第二項第二号イ及びロにおいて同じ。)の過半数を有する場合には、当該法人(以下この条及び第百二十七条の二第二項第二号ロにおいて「親法人」という。)について再生事件又は更生事件(以下この条において「再生事件等」という。)が係属しているときにおける当該株式会社(以下この条及び第百二十七条の二第二項第二号ロにおいて「子株式会社」という。)についての再生手続開始の申立ては、親法人の再生事件等が係属している地方裁判所にもすることができ、子株式会社について再生事件等が係属しているときにおける親法人についての再生手続開始の申立ては、子株式会社の再生事件等が係属している地方裁判所にもすることができる。

子株式会社又は親法人及び子株式会社が他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する場合には、当該他の株式会社を当該親法人の子株式会社とみなして、前項の規定を適用する。

第一項及び第二項の規定にかかわらず、株式会社が最終事業年度について会社法第四百四十四条の規定により当該株式会社及び他の法人に係る連結計算書類(同条第一項に規定する連結計算書類をいう。)を作成し、かつ、当該株式会社の定時株主総会においてその内容が報告された場合には、当該株式会社について再生事件等が係属しているときにおける当該他の法人についての再生手続開始の申立ては、当該株式会社の再生事件等が係属している地方裁判所にもすることができ、当該他の法人について再生事件等が係属しているときにおける当該株式会社についての再生手続開始の申立ては、当該他の法人の再生事件等が係属している地方裁判所にもすることができる。

第一項及び第二項の規定にかかわらず、法人について再生事件等が係属している場合における当該法人の代表者についての再生手続開始の申立ては、当該法人の再生事件等が係属している地方裁判所にもすることができ、法人の代表者について再生事件が係属している場合における当該法人についての再生手続開始の申立ては、当該法人の代表者の再生事件が係属している地方裁判所にもすることができる。

第一項及び第二項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる者のうちいずれか一人について再生事件が係属しているときは、それぞれ当該各号に掲げる他の者についての再生手続開始の申立ては、当該再生事件が係属している地方裁判所にもすることができる。

一 相互に連帯債務者の関係にある個人

二 相互に主たる債務者と保証人の関係にある個人

三 夫婦

第一項及び第二項の規定にかかわらず、再生債権者の数が五百人以上であるときは、これらの規定による管轄裁判所の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所にも、再生手続開始の申立てをすることができる。

第一項及び第二項の規定にかかわらず、再生債権者の数が千人以上であるときは、東京地方裁判所又は大阪地方裁判所にも、再生手続開始の申立てをすることができる。

10 前各項の規定により二以上の地方裁判所が管轄権を有するときは、再生事件は、先に再生手続開始の申立てがあった地方裁判所が管轄する。

(専属管轄)

第六条この法律に規定する裁判所の管轄は、専属とする。

(再生事件の移送)

第七条裁判所は、著しい損害又は遅滞を避けるため必要があると認めるときは、職権で、再生事件を次に掲げる裁判所のいずれかに移送することができる。

一 再生債務者の主たる営業所又は事務所以外の営業所又は事務所の所在地を管轄する地方裁判所

二 再生債務者の住所又は居所の所在地を管轄する地方裁判所

三 第五条第二項に規定する地方裁判所

四 次のイからハまでのいずれかに掲げる地方裁判所

イ 第五条第三項から第七項までに規定する地方裁判所

ロ 再生債権者の数が五百人以上であるときは、第五条第八項に規定する地方裁判所

ハ 再生債権者の数が千人以上であるときは、第五条第九項に規定する地方裁判所

五 第五条第三項から第九項までの規定によりこれらの規定に規定する地方裁判所に再生事件が係属しているときは、同条第一項又は第二項に規定する地方裁判所

(任意的口頭弁論等)

第八条再生手続に関する裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。

裁判所は、職権で、再生事件に関して必要な調査をすることができる。

(不服申立て)

第九条再生手続に関する裁判につき利害関係を有する者は、この法律に特別の定めがある場合に限り、当該裁判に対し即時抗告をすることができる。その期間は、裁判の公告があった場合には、その公告が効力を生じた日から起算して二週間とする。

(公告等)

第十条この法律の規定による公告は、官報に掲載してする。

公告は、掲載があった日の翌日に、その効力を生ずる。

この法律の規定により送達をしなければならない場合には、公告をもって、これに代えることができる。ただし、この法律の規定により公告及び送達をしなければならない場合は、この限りでない。

この法律の規定により裁判の公告がされたときは、一切の関係人に対して当該裁判の告知があったものとみなす。

前二項の規定は、この法律に特別の定めがある場合には、適用しない。

(法人の再生手続に関する登記の嘱託等)

第十一条法人である再生債務者について再生手続開始の決定があったときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、再生手続開始の登記を再生債務者の各営業所又は各事務所(法令の規定により当該営業所又は事務所の所在地における登記において登記すべき事項として当該法人を代表する者が定められているものに限る。)の所在地の登記所に嘱託しなければならない。ただし、再生債務者が外国会社であるときは、日本における各代表者(日本に住所を有するものに限る。)の住所地(日本に営業所を設けた外国会社にあっては、当該各営業所の所在地)の登記所に嘱託しなければならない。

前項の再生債務者について第五十四条第一項、第六十四条第一項又は第七十九条第一項(同条第三項において準用する場合を含む。次項において同じ。)の規定による処分がされた場合には、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、当該処分の登記を前項に規定する登記所に嘱託しなければならない。

前項の登記には、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める事項をも登記しなければならない。

一 前項に規定する第五十四条第一項の規定による処分の登記 監督委員の氏名又は名称及び住所並びに同条第二項の規定により指定された行為

二 前項に規定する第六十四条第一項又は第七十九条第一項の規定による処分の登記 管財人又は保全管理人の氏名又は名称及び住所、管財人又は保全管理人がそれぞれ単独にその職務を行うことについて第七十条第一項ただし書(第八十三条第一項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)の許可があったときはその旨並びに管財人又は保全管理人が職務を分掌することについて第七十条第一項ただし書の許可があったときはその旨及び各管財人又は各保全管理人が分掌する職務の内容

第二項の規定は、同項に規定する処分の変更若しくは取消しがあった場合又は前項に規定する事項に変更が生じた場合について準用する。

第一項の規定は、同項の再生債務者につき次に掲げる事由が生じた場合について準用する。

一 再生手続開始の決定の取消し、再生手続廃止又は再生計画認可若しくは不認可の決定の確定

二 再生計画取消しの決定の確定(再生手続終了前である場合に限る。)

三 再生手続終結の決定による再生手続の終結

登記官は、第一項の規定により再生手続開始の登記をする場合において、再生債務者について特別清算開始の登記があるときは、職権で、その登記を抹消しなければならない。

登記官は、第五項第一号の規定により再生手続開始の決定の取消しの登記をする場合において、前項の規定により抹消した登記があるときは、職権で、その登記を回復しなければならない。

第六項の規定は、第五項第一号の規定により再生計画の認可の登記をする場合における破産手続開始の登記について準用する。

(登記のある権利についての登記等の嘱託)

第十二条次に掲げる場合には、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、当該保全処分の登記を嘱託しなければならない。

一 再生債務者財産(再生債務者が有する一切の財産をいう。以下同じ。)に属する権利で登記がされたものに関し第三十条第一項(第三十六条第二項において準用する場合を含む。)の規定による保全処分があったとき。

二 登記のある権利に関し第百三十四条の二第一項(同条第七項において準用する場合を含む。)又は第百四十二条第一項若しくは第二項の規定による保全処分があったとき。

前項の規定は、同項に規定する保全処分の変更若しくは取消しがあった場合又は当該保全処分が効力を失った場合について準用する。

裁判所書記官は、再生手続開始の決定があった場合において、再生債務者に属する権利で登記がされたものについて会社法第九百三十八条第三項(同条第四項において準用する場合を含む。)の規定による登記があることを知ったときは、職権で、遅滞なく、その登記の抹消を嘱託しなければならない。

前項の規定による登記の抹消がされた場合において、再生手続開始の決定を取り消す決定が確定したときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、同項の規定により抹消された登記の回復を嘱託しなければならない。

第三項の規定は、再生計画認可の決定が確定した場合において、裁判所書記官が再生債務者に属する権利で登記がされたものについて破産手続開始の登記があることを知ったときについて準用する。

(否認の登記)

第十三条登記の原因である行為が否認されたときは、監督委員又は管財人は、否認の登記を申請しなければならない。登記が否認されたときも、同様とする。

登記官は、前項の否認の登記に係る権利に関する登記をするときは、職権で、次に掲げる登記を抹消しなければならない。

一 当該否認の登記

二 否認された行為を登記原因とする登記又は否認された登記

三 前号の登記に後れる登記があるときは、当該登記

前項に規定する場合において、否認された行為の後否認の登記がされるまでの間に、同項第二号に掲げる登記に係る権利を目的とする第三者の権利に関する登記(再生手続の関係において、その効力を主張することができるものに限る。第五項において同じ。)がされているときは、同項の規定にかかわらず、登記官は、職権で、当該否認の登記の抹消及び同号に掲げる登記に係る権利の再生債務者への移転の登記をしなければならない。

裁判所書記官は、第一項の否認の登記がされている場合において、再生債務者について、再生計画認可の決定が確定したときは、職権で、遅滞なく、当該否認の登記の抹消を嘱託しなければならない。

前項に規定する場合において、裁判所書記官から当該否認の登記の抹消の嘱託を受けたときは、登記官は、職権で、第二項第二号及び第三号に掲げる登記を抹消しなければならない。この場合において、否認された行為の後否認の登記がされるまでの間に、同項第二号に掲げる登記に係る権利を目的とする第三者の権利に関する登記がされているときは、登記官は、職権で、同項第二号及び第三号に掲げる登記の抹消に代えて、同項第二号に掲げる登記に係る権利の再生債務者への移転の登記をしなければならない。

裁判所書記官は、第一項の否認の登記がされている場合において、再生債務者について、再生手続開始の決定の取消し若しくは再生計画不認可の決定が確定したとき、又は再生計画認可の決定が確定する前に再生手続廃止の決定が確定したときは、職権で、遅滞なく、当該否認の登記の抹消を嘱託しなければならない。

(非課税)

第十四条前三条の規定による登記については、登録免許税を課さない。

(登録への準用)

第十五条前三条の規定は、登録のある権利について準用する。

(事件に関する文書の閲覧等)

第十六条利害関係人は、裁判所書記官に対し、この法律(この法律において準用する他の法律を含む。)の規定に基づき、裁判所に提出され、又は裁判所が作成した文書その他の物件(以下この条及び次条第一項において「文書等」という。)の閲覧を請求することができる。

利害関係人は、裁判所書記官に対し、文書等の謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。

前項の規定は、文書等のうち録音テープ又はビデオテープ(これらに準ずる方法により一定の事項を記録した物を含む。)に関しては、適用しない。この場合において、これらの物について利害関係人の請求があるときは、裁判所書記官は、その複製を許さなければならない。

前三項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる者は、当該各号に定める命令、保全処分、処分又は裁判のいずれかがあるまでの間は、前三項の規定による請求をすることができない。ただし、当該者が再生手続開始の申立人である場合は、この限りでない。

一 再生債務者以外の利害関係人 第二十六条第一項の規定による中止の命令、第二十七条第一項の規定による禁止の命令、第三十条第一項の規定による保全処分、第三十一条第一項の規定による中止の命令、第五十四条第一項若しくは第七十九条第一項の規定による処分、第百三十四条の二第一項の規定による保全処分、第百九十七条第一項の規定による中止の命令又は再生手続開始の申立てについての裁判

二 再生債務者 再生手続開始の申立てに関する口頭弁論若しくは再生債務者を呼び出す審尋の期日の指定の裁判又は前号に定める命令、保全処分、処分若しくは裁判

(支障部分の閲覧等の制限)

第十七条次に掲げる文書等について、利害関係人がその閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又はその複製(以下この条において「閲覧等」という。)を行うことにより、再生債務者の事業の維持再生に著しい支障を生ずるおそれ又は再生債務者の財産に著しい損害を与えるおそれがある部分(以下この条において「支障部分」という。)があることにつき疎明があった場合には、裁判所は、当該文書等を提出した再生債務者等(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人。以下この項及び次項において同じ。)、監督委員、調査委員又は個人再生委員の申立てにより、支障部分の閲覧等の請求をすることができる者を、当該申立てをした者及び再生債務者等に限ることができる。

一 第四十一条第一項(第八十一条第三項において準用する場合を含む。)、第四十二条第一項、第五十六条第五項又は第八十一条第一項ただし書の許可を得るために裁判所に提出された文書等

二 第六十二条第二項若しくは第二百二十三条第三項(第二百四十四条において準用する場合を含む。)に規定する調査の結果の報告又は第百二十五条第二項若しくは第三項の規定による報告に係る文書等

前項の申立てがあったときは、その申立てについての裁判が確定するまで、利害関係人(同項の申立てをした者及び再生債務者等を除く。次項において同じ。)は、支障部分の閲覧等の請求をすることができない。

支障部分の閲覧等の請求をしようとする利害関係人は、再生裁判所に対し、第一項に規定する要件を欠くこと又はこれを欠くに至ったことを理由として、同項の規定による決定の取消しの申立てをすることができる。

第一項の申立てを却下した決定及び前項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

第一項の規定による決定を取り消す決定は、確定しなければその効力を生じない。

(民事訴訟法の準用)

第十八条再生手続に関しては、特別の定めがある場合を除き、民事訴訟法の規定を準用する。

(最高裁判所規則)

第十九条この法律に定めるもののほか、再生手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。

第二十条削除

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